今回は、食事全体のパターンと健康や病気についてお話しします。個々の栄養素も生活習慣病や循環器病に関係していますが、食事パターンもまた重要であることが分かってきました。DASH食はご存知ない方もおられるでしょうが、米国で推奨されている食事です。DASHはDietary Approach to Stop Hypertensionの略称で、果物と野菜、低脂肪乳製品が多く、飽和脂肪と全脂肪は少ない食事です。この食事は、通常の米国的食事や果物・野菜が多い食事に比べて、血圧をよく下げることが示されています。
地中海食は地中海沿岸諸国の伝統的な食事で、オリーブオイル、全粒穀物、野菜、果物、豆、ナッツが豊富で、チーズやヨーグルト、魚、赤ワインも含まれます。この食事は、健康に対する良好な研究結果が多く報告されています。最近の大規模な長期介入試験で、オリーブオイルあるいはナッツを多くした地中海食は、通常の食事に比べて血圧を下げ、循環器病の発症を予防することが示されました。
日本食も野菜や魚が多く飽和脂肪が少ないなど、DASH食や地中海食と似ている部分があり、健康に良いと考えていいでしょう。ただ、伝統的な日本食は食塩がかなり多いことが問題です。以前は脳卒中による死亡率は、日本は世界のトップクラスでした。塩分を少なくすることができれば、日本食は循環器病の予防効果が期待できると思われます。
河野 雄平
帝京大学福岡医療技術学部 医療技術学科長／教授
日本高血圧学会 名誉会員／減塩委員会 前委員長
厚生労働省「日本人の食事摂取基準2015年版」策定検討会構成員
