食塩の話し(3)

 今回は食塩(塩分)と循環器病、がん、その他の病気、死亡率についてお話しします。食塩は血圧を上げることにより心臓肥大や動脈硬化をもたらしますが、血圧とは別に心臓や血管に悪影響を及ぼすことが分かってきました。すなわち、食塩の摂取量が多い人は少ない人に比べて、血圧が同じでも心筋梗塞や脳卒中などの循環器病になりやすいことが報告されています。

 食塩は他のいくつかの病気にも関係しています。食塩が多いところは胃がんが多く、その理由として、胃潰瘍や胃がんの原因になるピロリ菌が塩分の多い環境で増殖しやすいことが考えられます。また、食塩が多いと腎結石や骨粗鬆症も起こりやすくなります。食塩(塩化ナトリウム)を多く摂ると腎臓からナトリウムが尿の中にでますが、その一部はカルシウムに置き換わり尿のカルシウム量が増えることになります。

 食塩の摂取量と死亡率については、食塩が多いと死亡率が高いことが認められています。ただし、食塩が少ないほど死亡率が低いかとなると、逆の報告もあり、結論はまだでていません。

 このように、食塩の摂り過ぎは高血圧だけでなく多くの病気の原因となり、健康に悪影響を及ぼします。高血圧の人だけでなく、血圧が正常な人も食塩を制限することが望まれます。

河野 雄平
帝京大学福岡医療技術学部 医療技術学科長/教授
日本高血圧学会 名誉会員/減塩委員会 前委員長
厚生労働省「日本人の食事摂取基準2015年版」策定検討会構成員