食塩の話し(1)

 食塩(塩)が高血圧の原因になり、高血圧の予防や治療に塩分制限が大事だということは、ご存知だと思います。食塩は塩化ナトリウムで、ナトリウムは血液などの細胞外液の主要なイオンです。ナトリウムは体液や循環の調節に重要な役割を持っており、体に必要な物質です。食物の保存にも塩は有用ですね。昔は塩は貴重品で、給料として支給されていたこともあったようで、塩(salt)は給料(salary)の語源になっています。

 しかし、現代人は必要以上に塩を摂っています。日本人の食塩摂取量は以前から多く、最近は減少傾向にありますが、それでも1日の平均摂取量は約10グラム(男性は11グラム、女性は9グラム程度)で、まだ世界的には多い状態です。食塩の必要最小量は1日1グラム程度で、3グラムも摂れば十分と考えられます。例えば南米のヤノマモ族は、食塩の摂取量は1日1グラム未満ですが、日常生活には支障なく暮らしています。

 食塩の摂り過ぎは、高血圧だけでなく、いろいろな病気に関係していることが分かってきました。一般の人の1日の食塩摂取量について、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2015年版」では、男性で8グラム未満、女性は7グラム未満を目標としています。また、世界保健機関(WHO)は5グラム未満とすることを提唱しています。

河野 雄平
帝京大学福岡医療技術学部 医療技術学科長/教授
日本高血圧学会 名誉会員/減塩委員会 前委員長
厚生労働省「日本人の食事摂取基準2015年版」策定検討会構成員