アルコールと血圧、循環器病

 お酒は飲む人と飲まない人がおられるかと思いますが、今回はアルコール血圧循環器病についてお話しします。

 アルコールと高血圧の関係はよく知られており、飲酒者は非飲酒者より血圧は高く、飲酒制限により血圧が下がることが認められています。臨床的研究では、アルコール制限により血圧は3/2mmHgほど低下しています。しかし、アルコールと血圧との関係は単純ではありません。飲酒後には血圧はむしろ下がることが多く、とくに飲むと顔が赤くなる人では血圧低下が大きく、脈拍数はかなり増加します。私たちが高血圧の患者さんについて調べた研究では、飲酒期の血圧は飲酒制限期に比べて朝や日中はやや高く、夜間は逆に低く、24時間の平均値はあまり変わらないという結果でした。

 長期間の大量飲酒は心臓の肥大や機能低下をもたらし、心筋症や心不全、心房細動などの原因となります。また、脳出血やくも膜下出血のリスクとなり、その危険性は飲酒量が多いほど高くなります。しかし、アルコールの循環器病への影響は悪いことばかりではありません。心筋梗塞や閉塞性動脈硬化症は、飲酒者が非飲酒者より少ないことが知られています。脳梗塞については,少量では予防的に働き,大量ではリスクとなります。好影響の理由としては、HDLコレステロールを増やすことや、血液が固まりにくくなること、他の栄養素より血糖を上げにくいこと、などがあげられます。

アルコールと循環器病全体との関係では、少量では好影響があり、大量では悪影響が強くなります。少量とは男性で日本酒1合まで、女性はその半分です。

河野 雄平
帝京大学福岡医療技術学部 医療技術学科長/教授
日本高血圧学会 名誉会員/減塩委員会 前委員長
厚生労働省「日本人の食事摂取基準2015年版」策定検討会構成員