食塩の話し(2)

 食塩(塩)の取りすぎが高血圧の原因になることはご存知と思いますが、今回は塩と血圧についてもう少し詳しくお話しします。これまで多くの研究によって、食塩の摂取量が多い地域では血圧が高く、高血圧の人が多いことが明らかにされています。また、食塩の摂取量が極めて少ない人たちは、血圧が低く、加齢による血圧上昇もほとんどないことが示されています。

 食塩が血圧を上げる機序については、血液の量と心臓や腎臓のはたらきが主に関係しています。食塩を多く摂ると水分摂取が増え、血液量も増加し、心臓の拍出量が増えて血圧が上がります。また、身体は血圧を上げることによって腎臓から塩分や水分の排泄を増やし、バランスを保ちます。血液のナトリウム濃度が交感神経を刺激することも関係しているでしょう。ただし、食塩による血圧の上昇はみな同じではありません。個人差が大きく、腎臓の機能、年齢、性、人種、遺伝子、ホルモンなどが関係しています。

 食塩を減らせば血圧が下がることも明らかです。減塩の降圧効果には個人差はありますが、平均すると食塩を1日1g減らす毎に、高血圧の人は上の血圧が1くらい、正常血圧の人はその半分くらい下がります。1日10gの食塩を摂っていた高血圧の人が6g未満にできれば、血圧は5くらい下がることになり、日本人全体でみれば脳卒中などの予防に大きな意味があると考えられます。

河野 雄平
帝京大学福岡医療技術学部 医療技術学科長/教授
日本高血圧学会 名誉会員/減塩委員会 前委員長
厚生労働省「日本人の食事摂取基準2015年版」策定検討会構成員