肥満とメタボリック・シンドローム

 今回は、食事と関係が深い肥満メタボリック・シンドローム(メタボ)についてお話しします。どちらも健康に悪いことはご存知ですね。

肥満は高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病に強く関係しています。わが国でも世界的にも肥満者は増加を続けており、それによる健康障害が懸念されています。子供の肥満も問題になっています。ただ、よく飽食の時代といわれますが、日本人のエネルギー摂取量は増えているわけではなく、数十年前よりむしろ減っています。身体活動量の低下が肥満の大きな原因なのですが、相対的にはやはり食べ過ぎといえます。

肥満の人は適正体重への減量が推奨されます。目標は肥満の程度や合併する病気によって異なりますが、体重の3%から5%減らせれば効果が期待できます。減量1kgあたり高血圧の人の血圧は約1mmHg低下しますし、血糖も下がります。脂質では中性脂肪が大きく下がり、悪玉のLDLコレステロールは少し下がり、善玉のHDLコレステロールはいくらか上がります。

メタボは、腹部肥満に血圧や糖、脂質の異常を伴ったものです。心血管系の危険因子が重なっており、心筋梗塞などの循環器病になりやすい状態です。メタボも管理には減量が重要で、食事からのエネルギーを減らすことと、運動などで身体活動量を増やすこと、の組み合わせが最も望まれます。

しかし、減量は実行と継続が難しいことが大きな問題です。この解決は容易ではありませんが、簡便な食事プランの導入は効果的でしょう。高度肥満には、胃を部分的にくくる手術が行われることもあります。

河野 雄平
帝京大学福岡医療技術学部 医療技術学科長/教授
日本高血圧学会 名誉会員/減塩委員会 前委員長
厚生労働省「日本人の食事摂取基準2015年版」策定検討会構成員