冬の血圧と循環器病

 寒い日が続いていますが、冬になると血圧が上がります。この血圧変化は地域や個人によって異なりますが、冬は夏より5~10mmHg高くなります。その理由としては、寒さが自律神経系の交感神経を刺激して血管を収縮させることが大きいと思われます。冬は体重が増加しやすいことや、食塩も関係しているでしょう。冬に食べることが多い鍋物やおでんは、美味しいですがかなりの食塩を含んでいます。また、汗をかくことが少ないので、汗に含まれて体外に出る塩分も少なくなります。

 脳卒中や心筋梗塞などの循環器病も、冬に最も起こりやすいことが知られています。高血圧は循環器病の最大の危険因子であり、血圧の季節変動が冬の循環器病にも関与していると考えられます。また、交感神経の活動が高まると、心拍数が増えて不整脈が起こりやすくなりますし、血液は固まりやすくなります。

 したがって、冬の血圧対策は重要です。高血圧で治療中の方は、血圧が上がってきたら薬のことを主治医の先生にご相談下さい。室内の温度や食塩と体重にも注意していただきたいと思います。

河野 雄平
帝京大学福岡医療技術学部 医療技術学科長/教授
日本高血圧学会 名誉会員/減塩委員会 前委員長
厚生労働省「日本人の食事摂取基準2015年版」策定検討会構成員